髙橋拓也『時間をもっと大切にするための小さいノート活用術』(玄光社)

本書の紹介

 「小さいノート」はスマートフォンより小さく軽いけれど、タスク、メモ、日記、思いついたことなど、些細なことでも一冊に書き込むことによって、思考を整理できたり、点と点だった思考がつながって新しいアイディアがひらめいたりできる、そんな力を持っている。
 本書には、そんな「小さいノート」を活用するための具体的な方法が30例以上紹介されている。ノートやメモ、手帳がいまいち使いきれないという人でも、きっと参考になる例を見つけられるはず。
 また、「小さいノート」をはじめるにあたって、おすすめのノートや文房具にも触れているので、文具好きの人にもおすすめ。

選書の理由

 「時間をもっと大切にする」というタイトルに惹かれたため。1日1ページの手帳を買ったはいいが、簡単なタスク管理と、やったことの記録をつけるだけで、活用できずにもったいないと感じていた。また、そんな手帳の使い方から、「日々を漫然と過ごしているな」という危機感を持ったため。
 著者の近影が、インテリ感あふれる雰囲気で素敵だったため。わたしは眼鏡のインテリに弱い。

書評

 著者の「小さなノート」を使うことの良さについて、「なるほど」と思った部分を次に引用したい。

 台湾に旅行に行く計画を立てていた時のこと。まず小さいノートを開いて、金土日あるいは土日月、どちらのパターンで有給休暇を取るか考えてみます。そして、ルートの検討。これはスマホで検索します。JALANAだと、本数も多くてやはり便利。けれどもできるだけ安く行きたいから、LCCも数社比較してみる。その検索した結果を、逐一小さいノートに書き出します。あれ、もしかしたら羽田から台湾まで直接飛ばずに、国内で乗り継ぐというコースもありなのかな。少々時間はロスしても驚くほど安く行けるぞ……。思ってもみなかった選択が見えてきます。

 筆者は小さいノートに書き出していくことによって、スマートフォンの検索だけでは得られなかった発見をしていく。スマートフォンやPCの検索は最適解を与えてくれるけれど、それに小さいノートを使って思考を広げれば、+αの情報が得られるかもしれない。見落としていたものを拾ったり、思いついたことをメモしたりして、自分にとっての最良の解をみつけることができる。ただのルート検索が、旅の楽しい往路に変わるのだ。乗り換えで時間がかかるようなら、現地で気になるグルメを食べてみる、とか。移動時間が長いようなら、読んでいる本を持っていこうかな、とか。
 年末、でかける用事があったので、「小さなノート」を使いながらルート検索をしてみた。「ここで〇分の待ちがあるから、ホームの売店で飲み物を買おう」「鈍行は退屈だから、あの本を持っていこう」「トイレに行けるかな……」など、何でも書いてみる。楽しい。実際は思い描いたとおりにいかないこともあったけれど、それもまた旅の思い出。

 個人的に「おっ」と思った「小さいノート」活用法は次の2つ。

やるべきことが明確になる タスク振り分け
 見開きを4つに分けて、重要度と緊急度を基準にタスクを振り分けて記入します。

 これ、スティーブン・R・コビー『7つの習慣』の「時間管理のマトリックス」に通じるじゃないか。タテに重要度、ヨコに緊急度をとって、ノート一面を4分割。とにかくできるところからやってタスクを潰していく。重要度は高いけれど、緊急度は低い「第二領域」に注力できるようがんばれば、人生の充実につながる。それが「小さなノート」ひとつでできるのだな。
 この方法のいいところは、4つの領域に振り分けることで、雑然としたタスクの優先順位が可視化されるところにあると思う。できるところからやるためにも、タスクを細分化して、取り組むためのハードルを下げておかないとね。

シンプルに1日を振り返る 三行日記
 三行を、上から①よくなかったこと②よかったこと③明日の目標を一行ずつ書く

 「③明日の目標」は、簡単なこと、基本的なこと(「あいさつをする」とか)でいいそう。一日の終わりに、明日の目標を意識するところがよいね。リセットできて前向きになれそう。

感想

 たかが一冊のノート。されど「わたし」についていっぱいの一冊のノート。あこがれる。いずれはスケジュールやメモも、一冊の手帳かノートにまとめて一元管理したいと考えているが、本書はそのページの使い方の参考書・カタログとして大いに役立った。
 わたしは本書を読んでいてもたってもいられなくなり、あこがれのトラベラーズノートを購入した。わたしは無地のページに、好き勝手に書くのが性に合っているのだが(字も大きいし)、もうウキウキで何でも書き記していたので、早くもノート一冊が終わりそうである。今は買っておいた小さなノートが数冊あるので、それを使い切るまでトラベラーズノートは一旦お休み。でも、でかけるときは持って歩くくらい気に入っている。筆者も、「どんな1冊でも、自分が使いたい、持ち歩きたいと思うノートならどれでもOK!」と言ってくれている。たぶんこれからも試行錯誤しながら、わたしの「小さいノート」との旅はつづく。

まとめ

 100円ショップのミニノートでもいい。お気に入りのキャラクターのノートでもいい。持ち歩けるノートが一冊あると、あなたの思考が広がる。タスクやメモ、思いついたこと、記録、いたずら書きだっていい。なんでも一冊にまとめて、よりときめきに満ちた人生を歩んでみてはいかがだろうか。