おふみ『バッグは、3つあればいい 迷いがなくなる「定数化」』(KADOKAWA)

本書の紹介

 バッグは用途別に1つずつ、あわせて3つあればいい、というのが著者の現在の考え。ものの数や量を決めて管理することで、ずっと暮らしやすくなり、本当に必要なもの、欲しいものを考え、購入する余裕ができる。「定数化」「定量化」「定色化」をキーワードに、ものに迷わない暮らしのコツを、著者のイラストをふんだんに使って紹介。

選書の理由

 ミニマリストにあこがれはあるものの、わたしは極端にものを減らしては、また買って……をくり返してばかり。自分の適量を考えたくて、その参考とするため本書を手に取った。タイトルから自身をかえりみると、バッグを4つ持っている。3つの著者はどう使い分けているのか知りたい、という気持ちもあった。
 また、イラストが多く、肩の力を抜いた読書ができそうと思ったのも選書の理由。イラストが多いことで、イメージもしやすいだろうし。

書評

「定数化」「定量化」「定色化」で、ものの数を管理する

 ミニマリストは、ものが少ないことをよしとする向きがあると思う。なんにもない部屋。部屋が広く、確かに気持ちがいいのだけれど、わたしはものを減らすとリバウンドしてしまうたち。いっぽう著者は、ものの数を意識し、用途別に持つ数を決めているという(「定数化」)。そうしないと広告などに物欲をくすぐられて買ってしまうのだとか。著者は定数を決めるほかに、「定量化」も行っている。たとえばアクセサリー、本、食器などは、収納に入る分だけ持つ。「1 in, 1 out」(1つ手に入れたら、1つ手放す)のルールで運用していけば、定数のものは増えないし、定量のものは収容量に合わせて都度見直すことで、収納を超えたものを持たないようにしている。わたしは本を大量に手放しては、またちまちまと買い集めてしまうので、段ボール〇箱分と決めて本を選ぶようにするべきかなと感じた。本棚があるので、そこに詰めこんでしまいたくなるけれど、著者のように本箱に収納すれば、普段の片付けも、引っ越すときも楽だろうな。
 著者は「定数化」「定量化」ときて、「定色化」も提唱している。色をそろえるとすっきりした印象になる。ものを選ぶときの指針にもなってよさそう。わたしはスマートフォンと財布が黒なので、小物は黒でそろえてみよう。

「定数化」して服を考える

 もちろん服も定数化。そうすることで、いつもお気に入りの服と過ごせて、予算も検討する時間も十分にとれる。タイトルどおり、著者のバッグは3つ。

一時は白のコットントート1つに絞りましたが、TPOを考えるとさすがに少なすぎました。キレイめ、荷物が多い日用、アウトドア。私の今の生活スタイルなら、バッグは3つあれば十分です。

 ふむふむ。わたしはキレイめの服(ジャケパンとか)に合うものがないな。それから、仕事用とアウトドア用でバックパックが重複しているけれど、今後は1つでもいいな。どちらも黒だし。なるほど、「用途別に定数化」って、こんな感じで考えればいいのか。
 著者は上着やコートも気温別に定数化。上着は23℃以上/22℃以下で、コートは13℃以下/14℃以上で。結果、上着・コート類は計4着で着回しているそうだ。天気予報の服装の指標を参考に、3着をめどにわたしも定数化してみた。ダウンパーカー、トレンチコート、ボンバージャケット。今のところ、まったく不自由していない。色もアースカラーに「定色化」したから、モノトーンカラーばかりのわたしの服にも合わせやすい。服も1シーズンに3,4パターンのコーディネートを決めて着回せば、服にも悩まずにすむとのこと。だから仕事着もコーディネートを決めやすいように、明暗の色違いでそろえておくとよい。
 服の購入については、「セールに行かない」と決めている著者。

セールの時期に買っても、その服を着られる季節はすぐに終わってしまいます。欲しい色も売り切れていることが多いです。その季節が始まる2ヵ月ほど前には服を買い終えているので、セールには行きません。

 2月にはカットソーやシャツ、ワンピースなどの春物、5月にはTシャツやトップスといった夏物、8月は羽織りもの、ブルゾン薄手ニットなどの秋物、10月にはコートや厚手ニットを買う。たしかに季節が進んでくると、欲しい色って売れてしまっているものなのだよね。この時期感覚は気にしておこう。

ゆとりは持ちつつ、ムダを省く

 気がつくと増えている傘や文房具も、用途別に定数化して管理。著者は食器類も定数化しているのかしらん、と思っていたら、「コップ類はペアで持たなくていい」という著者。家事を手伝ってくれるようになったパートナーが、ペアのコップを割ってしまう天才なのだそう。だから、コップ類はペアでそろえず、残ったものを愛しんで使っているとのこと。ひとり暮らしなのに、食器類はペアでそろえてしまうわたしは目からうろこ。そうか。自分ひとりなら、自分が気に入ったものを使えばいいし、誰かが増えたとしたら、その人がお気に入りのものを使えばいいよね。ペアのものがあるからって、それを押しつけるのはちょっと違うかも、と考えることができた。そういうおおらかさや気持ちのゆとりも、数を決めて管理できているから生まれるものなのかも。
 また、あえて持たないものもあるそう。定数ゼロ。炊飯器はそのひとつで、ご飯を炊く機会が減ったのに、場所をとる炊飯器を思い切って手放し、土鍋や炊飯マグを使っているとのこと。わたしも炊飯器を手放そうと土鍋を使ってみたものの、根っからのずぼらには、土鍋ご飯は無理。炊飯マグか……試してみる価値はあるかも。季節の飾り物も、定数ゼロのひとつ。スマートフォンの待ち受け画像や、その季節の音楽で雰囲気を楽しんでいる、と著者。わたしは、季節の植物を買ってきていければいいのじゃないかな、と思うけれども、いかがだろうか。
 ものを増やさない工夫、というか、増えていない状況を維持する工夫も、著者は実行している。「気づいた瞬間に、何かのついでに行動する」こと。要領の悪いわたしが苦手なことだ。ものが落ちていたら、トイレに行きながら拾う、とかそういうやつ。うん、実行してみよう。3歩動いたら忘れそうだけれど。ニワトリかよ。

感想

 着こなしの例やメイク道具の定量化、それによるメイクやネイルの仕方のシンプル化/定番化など、女性向けに書かれた内容も多いが、「定数化」「定量化」「定色化」といった基本の考え方は誰にでも役立つと思う。上でも触れているように、わたしは早速、アウターの定数化を実行してみた。暑がりのため、著者の4着より少ない3着ではあるが、自分に合った定数を考えるのは楽しいし、何より気に入った服で過ごせるのは気持ちが上向きになる。まだ考えるべきものが、わたしの周りにたくさん散らかっている。自分の定数(定量・定色)を見極めながら、すこしずつ片付けていこう。

まとめ

 ミニマリストになるためには、何でもかんでも手放せばいい、というわけではない。自分に必要なものを見極め、管理を続けることが重要なのだ。「定数化」「定量化」「定色化」はその一歩。手に入れるときはもちろん、手放すときも、自分らしい揺るがぬ基準を持って、ものに向き合おうと本書は教えてくれる。